1934年の室戸台風で未来への道が閉ざされてしまった多くの子ども・教職員を追悼し、その名を永くとどめるために建てられたのが教育塔です。それを契機に、教育に関わる活動で尊い生命を失った子ども、教職員、教育関係者の方々を心から追悼し、その名を永くとどめ、不幸な出来事が再び起こらないことを願って執り行われてきたのが教育祭です。
第86回教育祭は、10月31日(日)、昨年新型コロナウイルス感染症拡大防止のためお呼びできなかった第85回のご遺族も同席のもと、開催されました。今回は新たに6人が合葬され、合葬者総数は27,279人となりました。
10時からはじまった祭典では、主催者を代表して、清水秀行日本教職員組合中央執行委員長が追悼の詞を述べました。その中で、前年来、世界的な規模で感染が拡大した新型コロナウイルスによる社会・経済に与える影響は今も続き、学校では登校そのものを控える子どもや給食時間の短縮、オンライン授業の併用による分散登校などが行われ、感染予防対策の徹底や様々な行事等が縮小・延期・中止になるなど、いまだに子どもたちの学びの機会が制限されている実態について述べました。そして、相変わらず深刻な問題となっている教職員の長時間労働について、引き続き各学校において勤務時間管理の徹底と「上限方針」の遵守、それが可能となるような業務の削減など、働き方改革を着実にすすめていくことを訴えました。
そして東日本大震災から10年、熊本地震から5年が経過した現在も復興への道のりは未だ途上にあり、転居先、転校先での暮らしを余儀なくされている子どもや、放射線の影響に不安をいだきながら学校生活を送らなければならない子どもたちに対し、寄り添い続けなければならないことを再度確認しました。
また、遺族を代表し、第85回教育祭で新たに合葬された小山宏さんのご遺族である小山めぐみさんが謝辞を述べました。小学校の主幹教諭として、新型コロナウイルス感染症の感染拡大による休校明けに子どもたちがすぐに植物観察を再開できるよう、硬くなってしまったの土の掘り起こし作業を手伝おうとトラクターで勤務校へ向かう途中、不慮の事故により亡くなった小山宏さんについて、めぐみさんは、「主人は、溌剌としてユーモアに溢れた教師でした。反面、大変真面目で、専門の理科の授業研究に妥協がなく、子どもに寄り添った授業展開をしようと日々研鑽し、後任の指導にも力を注いでいました。部活動にも熱心で、ソフトテニス部の顧問として情熱を傾け、厳しい練習の中にも愛情を持って接し、部活動を通して子どもたちの成長を後押ししていた姿が今でも目に浮かびます」と在りし日の小山さんを偲びました。また、「4月から新しい立場で子どもたちや学校のために今まで以上に働きたいと、夜ごと語っていたので、家族以上に、主人が一番悲しく、無念だったと思います」と、子どもや学校のために力を尽くしながらも志半ばで亡くなられた小山さんの思いを述べられました。最後に、「この一年半、数々の人の優しさをいただくことで、故人と過ごした日々を糧に、これからを生きていくことも、遺された者の使命であると感じ、少しずつではありますが、我が子と力を合わせ、前へ向かっていこうと思えるようになり始めた今日この頃でございます」と述べられ、謝辞を締めくくりました。